ほつれ

いつもの机とは違う場所でノートパソコンを使った後でケーブルを片付けようとした。コンセントまで遠いためケーブルを真っ直ぐな状態にして繋げていたので手の甲に巻きながら回収していったら、いつまでもコードが巻き終わらなくて、気付いたら家の壁がセー…

走る

「もう、これ以上走れない」なだれ込むように座り、空を見上げた。額から吹き出た汗が首筋に流れ落ちる。頑張った。だれが見ても、たとえ褒めはしないにしても不満を抱く者はいないだろう。こういう風に芝居仕立てにすることで、何とかダイエットのモチベー…

師走

師走に一番早く走っている人はどんな職業なのだろうという話になった。飲食業とか年末決算の経理担当とかイベント運営関係とか挙げていくうちに、友人が、「元旦や二日目だったらわかりやすいのに」と言ったので聞いてみた。「そりゃ、元旦はサッカー選手で…

引戸の棚を買った。使っていた棚は扉がなかった。その方が部屋が広く見えるし、棚に並べたクールなグッズを眺めてオシャレ気分を味わおうと思ったからだ。しかし、埃をはたくのが面倒だし、何よりオシャレグッズどころかガラクタばかりで、眺めてるとみすぼ…

フォントサイズ

絵文字のスクリーンセーバーを作ろうと思い、特大サイズのフォントで絵文字を表示してそれをスクリーンショットで保存した。ランチから戻ってくると同僚が誤字の訂正依頼に来たので、一緒に画面を見ながら修正を行なおうとしたら、先程の特大サイズで文字が…

クリスマスカラー

案件を白紙に戻すと言われ私たちは青白い顔になった。部長の腹黒さに怒り、顔を真っ赤にして反論したが後の祭りだった。自席に着いて、年末は大忙しのはずが暇になったと、腹黒い部長に対して真っ赤になったり青白くなったりした先程を思い出すと、急にクリ…

デザイン

記事をデザイン中に、日本語の文章中にある英単語のフォントとか単語間のスペースとかのバランスが気になって仕方がなかった。ならばいっその事と、日本語は右から縦書きで、英単語が出たらそこから右へ横書きしていくという方法で文章を重層化したが、嵩張…

ネコの生活

ネコと同じ一日を過ごしてやるぞと、以前からウチのネコの自堕落な生活を羨ましく思っていたので後を付いて行ったが、今日に限って朝から寒空に飛び出すやいなや、塀の上を走ったり近所のネコと縄張り争いをしたりと非常に行動的で、すぐに筋肉痛になった自…

幹事

嫌々同窓会幹事を引き受ける事になった。渡された名簿を見たら連絡先が分からないためかセキュリティのためか、多くの文字が伏せ字にしてあった。これはだいぶ連絡をする手間が省けるなと思っていたのだが、自分の欄を見たら全て空白になっており、それはそ…

輪投げ

石油ストーブは石油を入れるの面倒だし、電気ヒーターは暖かみに欠けるし、コタツは離れられなくなるし、床暖房はそもそも設置する余裕がないし、いったい何を買ったらいいのだろうと、この堂々巡りという輪を用いた輪投げがあれば、もう何年も続けているの…

情緒

月が魅力的なのは夜空を美しく照らすからなのか、それとも満ち欠けにより異なる表情が見ているものを叙情的な気分にするからなのか。そんな風に月が美しい理由を理詰めで求めようとしている自分は何と情緒という言葉とかけ離れているのだろうと思いながら長…

世知辛い

若手が多い部署に異動となった。「辛い食べ物は好きですが、世知辛い人間関係は苦手ですので仲良く頑張りましょう」と挨拶したらウケなかった。「今までも同じような挨拶をしたが、愛想笑いくらいはあったのに」とぼやいたら、「世知辛いも世辞笑いもいらな…

鍋奉行

部長同席の鍋で、鍋奉行と言うのは町奉行か、寺社奉行か、それとも勘定奉行かという話になった。経理部門が長い部長は勘定奉行が嬉しいかなと察して言ったら、勘定奉行だから会計はきっちりするぞとドライだったものの、結果いつもより多く払ってくれた。何…

一人鍋を学ぶ会が盛況だという。一人で鍋をするほど寂しい状況ゆえ人恋しさで参加するのか、それともより美味しい鍋を真剣に模索しようと参加するのかは不明だが、会に参加する事も一人鍋を行なう事もどちらもSNSに上げるネタとして使えるというのが理由では…

微睡み

赤ちゃんがまどろむ姿を眺めると何でも許せてしまう気分になる。これを使わない手はないと思い、ボーナスで買いたいものを書いたメモを胸に乗せ、まどろんだ表情を浮かべてソファーで寝たが、効果はなかった。起きた時、「せめて靴下置いてお願いする位で留…

参考書

「私にとって参考書みたいな存在です」と後輩に言われ誇らしげでいた。しかし、同期でトップの成績の彼女が、すぐにダジャレでトラブルを逃れようとする私の何を学びたいのだろうと思い、久々に参考書を手にしてみたら、章の間のCoffee Breakというコラムが…

コタツ

コタツを出す前は、コタツをいつ出そうかという誘惑と戦い、コタツを出してしまえば、コタツに早く入りたいという誘惑と戦い、コタツに入ってしまえば、ずっとコタツの中で過ごしていたいという誘惑と戦い、冬が訪れる度に、そんな強敵ともうかれこれ長い年…

無料

海で貝殻を拾ったのでタダで彼女へのプレゼントができたと言ったら友達も真似した。デートの時、彼女に渡そうとしたら「潮干狩りしたの?」と聞かれた。友達がSNSに潮干狩りという名で写真を上げたようだ。ムードがなくなった状態で無料のプレゼントを渡すの…

紅葉

この村では今年から秋に木々が葉を赤や黄色に染めるのをやめたそうだ。だからといって紅葉がなくなったのではない。冬が来る瞬間まで葉を緑に保ち力強く生い茂っているさまを観光客に見せたいという木々の粋な計らいなのだ。そんな風に想像して、紅葉には少…

課長が昇進祝いの席で、「私なんて部長に昇進できる器ではないのに」と言ったので、「いっつも水が溢れちゃってうちら大変ですよ」とからかった。すると、「まあ、彼みたいに日常的に業務が焦げ付いちゃってる奴がいるので今後も適度に水とハッパを掛けてい…

マリンレジャー

ネットで誕生日プレゼントを探し中にネットサーフィンしてしまい、プレゼント探しのことを忘れてしまった。正直に彼女にそのことを話すと、「へー、サーフィンねー。いいじゃん楽しそうで。私もマリンレジャー系にしようかな」と言って、湾内クルージングデ…

違い

女性は僅かな色の違いがわかると聞いたので、彼女に同じ色を2つ見せて、色の違いわかる?と意地悪な質問をしてみたが怒られなかった。少し前に彼女がコーヒー豆を良いものに変えたと言ったので、美味しいなと喜んで飲んでいたが、先日ふとパッケージを見ると…

歴史好き

歴史好きな甥と城に行き壮観さに、聞きしに勝る城だと呟いたら、誰が大往生した城?と甥が質問した。知識を披露したくて出題したなと思い、知らんと答えたが質問を繰返された。危機死にまする城、と聞こえたようだと後で知った。城を見たくらいで突然侍言葉…

雷オヤジ

雷オヤジと恐れられた父も昔のような怒鳴り声を上げなくなったと母から聞いていた。帰省した時に、「最近は雷オヤジじゃなくなったのか」と聞いた。「ああ、もうそういうのからは身を引いた」と父は答えた。「じゃあ、今は、かなりオヤジなだけなんだな」と…

進歩

「最近、電話よりメールやゲームとして使われることが多いだろ。本懐を遂げてないように思えてさ」酒の席で友人がスマホに触って言った。長く勤めた部からの異動にまだ未練があるようだ。彼の背中を叩き「このタッチパネルは感度が鈍いなあ。早く最新機能を…

願望

「足が早かったらな」「そうだったとしたらどうなるの?」「ここで走ってる」マラソン中継を見ながら彼女が呟くのを聞いて吹き出した。全く想像がつかない。「あと、寒さや練習に対する忍耐力もあったらね」そうからかうと、「忍耐力のある人にお任せします…

ネーミング

何とかジャパンというネーミングを付けることで自分達のプロジェクトチームの結束を高めようと、私たちに相応しい花の名前を社内公募したら、姥百合ジャパンとかウメモドキジャパンと投稿が来た。もっと私たちっぽいフレッシュな花にしてよと怒ったら、竜舌…

ジョブ

楽しく働こうと、仕事という厳めしい単語を軽快にした。ジョギングという響きが健康的なので、仕事の事をジョビングと変えた。何とも清々しい気分だ。雨がジャブジャブ降るという響きが可愛いので、朝からジョブジョブして忙しいと言ってみた。残念ながら使…

デザイン

友人に名刺のデザインを頼まれた。こだわりはないという。ミニマルデザインにしたらシンプル過ぎると言われ遊び心を加えたら派手過ぎと却下された。面倒になり、無地の名刺とマーカーを渡し「お好みでデザインしてと言って渡せば」と伝えたら、「そのアイデ…

外出

天気が良かったので外出しようと提案したら、「植物園は花粉が気になるし動物園は寒くて並ぶの無理」と彼女が反対した。結局、折角の休日をネットで動物や季節の植物を観て過ごした。満たされない表情をしていたのだろう。「水族館も行こうよ」と言って彼女…