2013-03-04から1日間の記事一覧

コントローラー

ゲーム中に徐々に力が入ってきて、コントローラーを動かしながら自分も一緒に体が左右に揺れてしまう。隣りで倦怠期の彼が小馬鹿にしたように私のその動きをからかったから、「今日の私を操作してる人は、コントローラーの扱いになれていないみたいで新鮮で…

世界一

何かで世界一になろうと思い、ギネスブックに載ってない種目を調べたが既に数多の世界一があり、とても新しく見つかりそうにない。そこで適当な言葉を考えてその言葉に世界一が存在するか検索を初めた。十年後。ついに、どうでもいい言葉を検索した数の世界…

代行

即完売の店もあるほど、おせちを買う人が増えたので予約を代行する業者が現れた。これが人気で代行者への予約が取れず、この業者への予約を代行をする者が現れた。こうして業者は増えたが肝心の料理人の数が不足したので、予約した本人を来店させて各自おせ…

音楽会

音の無い音楽会に行った。会場はとても静かで観客は全員マネキンかと思うほどだった。暫くすると音楽会は音もなく開演された。喉を鳴らすのも憚れるような重い沈黙の後、徐々に周りの微かな吐息や鼓動が聞こえてきた。多くの人とシンフォニーを奏でて日々生…

ドラマ

ドラマのような人生を送りたいと願っていた少女は、卒業後すぐに上京した。モデル事務所にも登録でき、華やかな生活の始まりを喜んだがオファーは少なかった。多くの時間をアルバイトで費やし、やがて生活に疲れて田舎に帰った。まさに、ドラマによくある人…

眉ラー

眉ラーという言葉があると噂を聞き、アムラーのように流行に合わせて睫毛を盛っている子にマツラーというならわかるが、眉ラーとは何なのかと言語学研究員は調査を始めた。しかし、眉にラー油をつけてツヤを出しつつ、香ばしい匂いで草食男子を引き寄せる罠…

マフラー

マフラーを大切にしている男に出会った。大切な人から貰ったものだろう。愛おしそうに生地を撫でていた。兎角乱雑にマフラーを扱いがちな自分を戒めるために弟子となった。男は笛でマフラーを操れると吹いたが、ハンガーに掛かったままだった。こうしてマフ…

サングラス

季節外れにサングラスを買った。夏に彼の留学先に行く予定だった。束の間のセレブライフに必要とサングラスを買おうとした矢先に失恋した。季節はクリスマス。これは自分へのプレゼント。でも何の役にも立たない。窓に映る未練がましい自分を見る好奇の目。…

教科書

学ぶ必要のない教科書があったとする。各教科の学ぶ必要がないものが掲載されている。小学校で学ぶ必要のない教科書とか高校で学ぶ必要のない教科書の掲載記事選定のために利害関係者が毎年大わらわとなる。 道徳の教科書ではその光景を学ぶ必要のないものと…

囁き禁止条例

街の条例で囁きが禁止となった。囁きがなくなれば陰口ができなくなる。会話がオープンになり明瞭となるだろう。残念ながら甘い囁きはなくなるけど、善からぬ男女の関係も減るだろう。しばらくして成果の確認のためにアンケートした。多くの人は、街が騒がし…

前後

前と後がいた。前はいつも自分が先頭でいることが不満だった。後はいつも自分が最後であることが不満だった。そこで、お互いに話し合って順番を変えることにした。たしかに新鮮な息吹が感じられた。そんなある日、一人の男がやってきて前と後に言った。君た…

行楽地の橋

普段は漁師が釣りをし、秋の行楽時だけ賑わう河があった。常に橋が必要ではなく、漁船は古かった。そこで秋には橋になる川幅の長さの船の建造案がでた。春に完成した長い船は漁に重用され秋に橋として活躍した。冬に川岸の落葉が船につかえた。水は濁り、魚…

ブラインド

いつも閉じているブラインドの掃除をしようとした時に、ふと昔の刑事ドラマの演出であったように指先で少しだけ押し下げて外を眺めてみた。夜だったので自分の瞳がガラスに映ったのが見えたのだが、思わずビックリした拍子に横にある棚の角に頭をぶつけたら…

辞書

子供の頃に、わからないことは辞書をひきなさいと言われた。棚から辞書をひいて取り出すから、辞書をひくと言うのだなと勘違いしていた。先日、ネット辞書を使った時、キーを押しながら「辞書でおしてみた結果」と言ったら、「Aさんの推し辞書はどこのサイト…

ストリートシンガー

ストリートシンガーが自由を謳歌していた。彼の自由な歌と生き様に憧れ真似をして歌う人が増えた。ギターやトランペットを手にして彼の隣りに並んだ。いつのまにか路上は歌手だらけになり音を聞き分けることが難しくなった。そこで、指揮者の元で統率のとれ…

流行語大賞

口癖を止めるきっかけになればと、自分のなかでの今年の流行語大賞を毎年記録している。ここ3年は「スゲー」、「かなり」、「ウケる」だった。できれば、「けだし」、「いずくんぞ」、「なかんずく」みたいな素敵な言葉が口癖にと思うのだが、今年は「甘酸っ…

クリックミー

ネットを見ていたらクリックミーというボタンが表示され思わず押してみた。すると、またクリックミーと表示された。そして、また押してしまった。再度ボタンが表示された。そんなことが繰り返された。「マトリョーシカ方式!」玩ばれたような、でも、ほっこ…

イヨビ

カタカナを使わないと書き方を忘れてしまう。この間もヨを書く時にEと迷ってしまった。恥ずかしい限りである。そこで、忘れないように語呂合わせを考えた。Eとヨを足して日。イヨビ、または、イヨニチ。なんのヒネりもないこの語呂合わせで、はて、次回は思…

おしゃれ

すっかり寒い。暑い盛りには寒い方が過ごしやすいなあ、なんて思っていたのにもう夏が待ち遠しい。ぼやきを聞いていた友に、寒いと服をチョイスしてオシャレができるから楽しいわよと言われた。チョイスできるようになるだけの服を揃えたら来年の夏過ぎまで…

時計の針

楽しい時はすぐに過ぎ、退屈な時は時間が進まない。それが感覚的なものだけなのか確認するため退屈なバイト中に壁時計を外して針を調べた。針はぐにゃりとゴムみたいで精密に稼動するように見えない。ははあ、針もこの気怠さを感じ取ったのだなと思うと同じ…

しっぽ

人間にしっぽが残ってたら手は今のように進化していなかっただろう。でも、もし今もしっぽがあったら歯を磨きながらしっぽで他の用事ができるし、スポーツのルールも大きく変わってるだろう。考えるだけでわくわくする。しかし、彼女は、満員電車に乗るたび…

赤と黄色の先頭の文字で秋。色付いた葉が重なるさまが、まさに秋を表している。この季節を「あかときいろ」と呼んだのを誰かが略してあきと呼び始めたのかも。秋が終わると落ち葉となり、我々はそれを燃して暖をとる。故に赤と黄色の残りの文字を使って懐炉…

天体望遠鏡

すごく高性能の天体望遠鏡を使って遥か彼方の夜空を眺めてみる。その望遠鏡が高性能であればずっと遠くを眺めることができる。太陽系を越え銀河系を越え数多の銀河を越えて、ようやくレンズが捉えたのはこの望遠鏡を眺めている後ろ姿。しかし、なぜか自分で…

面白い犬

面白い話で有名な犬がいたので話しかけてみた。しかし、犬は言葉が理解できないようで知らん顔。そこで、犬の言葉がわかる人に通訳を依頼した。彼は会話中に大爆笑。犬は「いつでも話すよ」と彼に言っただけという。全く面白くない。彼の通訳が下手なのか、…